Googleで「ヨミ表 リクルート」を叩くと、多くの検索結果が表示されます。コラム、解説、セミナー、関連書籍など、少なくない数あります。トヨタ自動車のカイゼンほど有名ではありませんが、営業に携わる人であれば、聞いたことがあるかもしれません。コラムのひとつに、「リクルートの全事業部の営業組織は、チームからグループ、部、事業部、カンパニー、事業会社に至るまで全てこのヨミ表をベースにした業績管理手法を取っています。」との記述があり、OBである私は少々驚きました。懐かしくもあり、今でも継続されていることに驚いたのです。
ヨミ表を簡単に説明しますと、見込商談の管理表のことです。かなりシンプルにした例を上にご紹介します。商談名、確度、金額、時期を一覧にして、目標予算との差額を割り出しています。どこの会社にもありそうなものです。当時もセクションによって流派があり、統一フォーマットはないものの同じ用途で使われていました。「ナンデナンデ攻撃」に晒される定例会議=ヨミ会で使うためです。「ナンデ、この確度なの?」「ナンデ、この時期に決まるの?」「ナンデ、この金額なの?」「お客様はナンデ懸念しているの?」ネンデ?ナンデ?ナンデ?・・・。で、どうやって不足額を埋めるの?今週はどんな動きするの?それはナンデ?君はどうしたい?
そこで、担当者(ヨミ表の作者)は、事実や自分の考えを根拠に応答し、ヨミ会参加メンバー(通常は課長、課員)がそれに対し更にナンデ、ナンデを繰り返します。「何となく」とか「勘で」は認められず、根拠を追求される会合です。運営を間違うと、つるし上げや叱責だけになってしまいます。問う側、応答する側に共通認識が必要です。目的は業績管理、行動管理と同時に、担当者を主観や思い込みから解放すること、当事者意識を強めることです。目的を共有すること、できるだけ自分で考えさせることがヨミ会成功の秘訣でした。人間ですから、普通はエキサイトしてしまいますね。
創業者の江副浩正さんが著書の中で、「社内に数多くフィードバックの回路をつくり、それらが組織に有効に機能するようにしていった。」「コウモリが洞窟の中の暗闇を自由に飛んでいるのは、自身が信号を発信し、そのフィードバックを受けていつも安全を確認しているからである。このようなことをフィードフォワードとみることもできる」と語られています。
ヨミ表は自分が発する信号、「ナンデナンデ」のヨミ会からのフィードバック、自分の考えを再発信、これを繰り返すことで、正解のない法人営業のなかで、その時点でのベストな方向に猛スピードで飛べる集団になれたのかもしれません。逆に、方向の修正ができるから猛スピードで飛べるとも言えます。会社に組み込まれたフィードバック装置が、ヨミ表であり、ヨミ会だったのかと、離れてあらためてわかった「そうだったのか」でした。